面白すぎる



山手樹一郎の『変化大名』を読む。
なぜ「変化」なのか、読み終わった今もよく分からない。
しかし、とにかく面白かった。読み出したら、最後まで行かないとやめられないと分かっているのに、最初のページを覗いてしまったのがいけなかった。おかげでここ2日ほど何もできなかった。
息をつかせぬストーリー展開と読者をひきつける語り口。山手樹一郎はおそろしく文章が上手い。この調子で何十冊も書いているのだから恐れ入る。

ぼくが山手樹一郎にハマったのは高校2年の時。
新潮文庫で出ていた『江戸群盗記』『又四郎行状記』『江戸へ百七十里』『朝晴れ鷹』を次々と読んでいった。勉強がおろそかになった。あのまま山手樹一郎にのめり込んでいたら、大変なことになっていた。少なくとも、人生がかなり変わっていただろう。(余談ですが、『江戸群盗伝』という本も当時新潮文庫で出ていたと思う。こちらは柴田錬三郎。)
しかし、そうはならなかった。ある出来事があり、時代劇を楽しんで読んでいる余裕がなくなったのだ。それ機に、勉強に専念することになる。
で、現在に至る、というわけだが、山手樹一郎の面白さというのはずっと記憶に残っていた。
久しぶりに読んだが、山手樹一郎は面白い、と改めて思った。
コスミック・時代文庫の山手作品は、「傑作選」と銘打っているだけあって、いったんページを開いたら、本を閉じて机の上に置くことはできない。これは比喩ではなく、文字通り、本を閉じられなくなるだろう。

ウィキペディアで山手樹一郎を調べたら、詩人の井坂洋子は、山手の孫にあたるそうだ。時代劇作家の孫が現代の詩人とは意外だった。

2017/10/21 18:08 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

Dream a little dream of you



夢のカリフォルニア』、『マンデーマンデー』などのヒットで知られるママス&パパス。カセットテープに録音した音源を聴いていたら、聞き覚えのあるメロディに出くわした。
調べてみると、Dream a little dream of youという曲だった。
例によって、記憶をたどって思い出してみると、エンゾ・エンゾのベスト盤に行きついた。2曲目にles yeux ouvertsという曲が入っている。邦題は「夢の中の愛」。Dream a little dream of youにエンゾ・エンゾがフランス語の詞を付けて歌っている。ママパパと同じようなテンポなのだが、ずいぶん印象が違う。もとは古いジャズのスタンダードナンバーらしい。

60年代にぼくが音楽を聴き始めた頃には、ママパパはまだ活動していたと思うが、何故かリアルタイムで聴くことはなかった。ずいぶん後になって、図書館でCDを借りて録音したのが今回のカセットテープ。ほかにビートルズのI call your nameもカバーしている。
Dream a little dream of youとI call your nameでリードボーカルをとっているママ・キャス・エリオットは、若くして亡くなっている。4人の中では、一番歌が上手かった。
もう1人の女性ボーカル、ミシェル・フィリップスは、女優として今でも活動している。
ウィルソン・フィリップスという女性3人組のグループは、フィリップスの娘1人と、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンの娘2人から成る。残念ながらこの3人、生で歌うとあまり上手くない。ミシェルの娘はともかく、ブライアンの娘はもっと上手くてもいいのにな。

「夢のカリフォルニア」と言ったら、ぼくにとっては、ホセ・フェエリシアーノの歌か、ジョージ・ベンソンのギター演奏なのだが、オリジナルは、ママス&パパスなんですね。作ったのは、ジョン・フィリップスとミシェル・フィリップスだ。

2017/10/14 18:10 | 音楽COMMENT(0)  TOP

さよならを教えて



ぼくなどが言っても詮無いことは分かっているが、どうしても気になるので書く。

今日、この間までやっていたNHKの朝ドラ『ひよっこ』のダイジェスト放送をしていた。
で、登場人物たちが「恋愛モード」になると、太田裕美の声で♪ル、ル、ル、ル、ルッル、ルルッルー~という歌が流れてくる。朝ドラの放映中に、米屋のシーンで最初に聞いたとき、『さよならを教えて』に日本語の詞を付けて歌っているのだと思った。ところが、後半になるとメロディーが少し変わってくる。
ここまで『さよならを教えて』を引用しておいて、自分で作曲しましたというのはどうなのかな。
『さよならを教えて』は、もともとヴェラ・リンという人が歌ってヒットしたジャズのナンバーだ。フランソワーズ・アルディはこのメロディーが気に入ったので、セルジュ・ゲンズブールにフランス語の歌詞を書いて貰ったのだという。
原曲はスローなバラードだが、テンポアップして、おしゃれに仕上げたのはゲンズブールのアイディアか。ほとんど原形をとどめない。ジャズのスタンダードナンバーが、ポップな曲に生まれ変わった。ゲンズブールの歌詞もおもしろいし、見事。
ここまで変えても、レコードジャケットの後ろに印刷してある曲のタイトルの下に括弧してIt Hurts to Say Goodbyeと書いてあるし、作詞ゲンズブールと並んで、作曲者の名前も書いてある。

「冬のソナタ」と「愛はかげろう」とか、「君恋し」とSeptember Songとか、聴いてみてくださいよ。
ぼくなどが言っても詮無いことですが。

2017/10/09 22:29 | 音楽COMMENT(0)  TOP

学識



講談社学術文庫の新刊で、西郷信綱の『梁塵秘抄』が出ていた。
買おうかなと思ったが、文字が小さいので、図書館で全集を借りた。
この本、1976年に日本詩人選の1冊として筑摩書房より出たものの文庫化。ぼくは当時、日本詩人選で読んでいる。
日本詩人選では、作家や詩人や研究者が一人の詩人を取り上げて書いている。丸谷才一の『後鳥羽院』も、中村真一郎の『建礼門院右京大夫』も、大岡信の『紀貫之』も最初はこのシリーズで出た。続いて現代の詩人を扱った「近代日本詩人選」も出ている。吉本隆明が『宮澤賢治』を書いたり、佐々木幹郎が『中原中也』を書いたりしている。執筆者のラインナップが斬新だった。この顔ぶれだから、それぞれ切り込み方がユニークだった。
あの頃、筑摩はいい本をたくさん出していた。企画力があった。こういう本が売れたんだから、いい時代だった。

で、西郷信綱の『梁塵秘抄』。西郷は学者ではあるが、文学的なセンスがあり、解釈がユニークで面白い。
『梁塵秘抄』の歌を1つずつ、1つのエッセイで解釈しているが、その学識に舌を巻く。宇治拾遺物語、更級日記、枕草子などの大古典からマイナーな文献まで、一つ一つのエッセイで広く資料を読み込んでいるあとがうかがえる。
この言葉は、何々のどこ、この言い方は何々のどこ、と、いとも簡単に引用しているが、こういうことができるには、幅広く古典を読んでいて、しかも覚えていなければならない。これは並大抵のことではないのだ。
久しぶりに真の学識に触れた。

2017/10/07 21:59 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

エドワード・トマス訳詩集



エドワード・トマスは英国の詩人。詩の翻訳はこれが初めてかもしれない。
エッセイ、紀行文などはたくさん書いているが、詩はそれほど残していない。第一次世界大戦で若くして戦死してしまった。
吉川朗子の翻訳が上手いこともあるが、イギリスの田園風景、そこで暮らす人びと、詩人自身のことを歌った詩が、素晴らしい。
ぼくは特に「五 大地の住人」の章に収められている「ロブ」という長い詩が気に入った。が、これは長いのであきらめて、「7月」という短い詩を引用しよう。

雲のほか動くものはなく 硝子のような湖面には
雲と小舟の影が映る。小舟自体が動くのは
暑さのなか 孤独に浮かぶまどろみを破り
見えているのは鳥か塵か
岸辺の森はもう目覚めているか
確かめようとするときだけ。

夜明け以来 高く 深く 光が広がり 満ちていく
長いひととき、僕はずっと ひんやりとした葦が
水中に映る さらに冷たい影の上に頭(こうべ)を垂れるさまを 眺めていた。
そんなに長い間 考えるに値するものは 何もなかった。
遠くの葉陰で モリバトの語るすべてのことが
こうして静かに横たわる満足感で 心を満たす。

エドワード・トマスは日本ではほとんど知られていないと思っていたら、イギリスの児童文学作家、エリナー・ファージョンの『想い出のエドワード・トマス―最後の4年間』という本の翻訳が出ていた。ファージョンは『銀のシギ』『ムギと王様』などで知られる人気作家。日本でも翻訳がたくさん出ている。
意外な取り合わせ。
トマスが戦死する5年ほど前から親交があったらしい。

2017/10/06 21:53 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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