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ショコラからクジラへ



19世紀のアメリカの作家でハーマン・メルヴィルという人がいる。『白鯨』を書いた。ほかにも何作か書いていて、最近は日本でも翻訳が出ているが、圧倒的に『白鯨』が有名だろう。これ、アメリカ文学の白眉だと、ぼくは思う。

大藪春彦の小説『野獣死すべし』を原作にした映画か、テレビドラマで、主人公が『白鯨』を原書で読んでいるシーンがあったと思う。『白鯨』は内容から言って、ハードボイルドな主人公が読むのに相応しいのだ。

イギリスのロックバンド、レッド・ツェッペリンの曲でMoby Dick(白鯨)というのがある。インストゥルメンタル・ナンバー。ぼくが好きなジョン・ボーナムのドラムソロが炸裂している。ボーナムのドラミングは大きなクジラが暴れているように聞こえる。

白鯨に片足を食いちぎられた、捕鯨船の船長エイハブが白鯨に復讐しようとして航海するというのが物語の本筋なんだけれど、博物学的な脱線が大量にある。この脱線にこそ『白鯨』の真面目(しんめんもく)なのだが、それはさておき……

彼らはなんのためにクジラを取っていたか。
鯨油を取るためだ。鯨油は当時、灯火用油、機械油、洗剤、マーガリンの原料など、多岐にわたって使われていた。つまり金になった。クジラをクリンチでつるして、鯨油を取る場面が『白鯨』にも出てきたと思う。そして鯨油を取った後の死骸は海に捨てる。これも書いてあったように思う。
日本のように肉を食べたり、ひげや皮を加工して様々なものを作ったりするわけではないのですね。彼らにとって、鯨油以外はただのゴミだった。
そう言えばずっと前に、所さんが『私はクジラ無駄がない』というタイトルの本を出していたような気がする。上手いタイトルだと思ったので憶えている。命をいただくわけだから、日本人はクジラを無駄なく利用していた。

今日の英会話の授業でイギリス人の先生が、捕鯨だけが日本の欠点だ、みたいなことを言い出したので、みんなで反論したのだが、「命をいただく」という感覚が欧米人には理解できないようだ。

ニューヨークの沖などアメリカの海には、海が真っ黒に見えるほどクジラがいたと言われている。それを鯨油のためだけに殺したのは彼らなのだが……

2019/01/16 17:54 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

フランス語と日本語



フランス語の絵本Gaspard et Lisa au Japonが図書館にあったので借りてみた。フランス語の勉強にちょうどいいかも、と思ったのだが、読んでみるとなかなか難しいところがある。
2ページ目で、ヴィクトリアの代わりに、ガスパールが日本に来たことになっている。そもそもぼくは「リサとガスパール」シリーズを読んだことがないから、このヴィクトリアが誰だか分からなかった。調べると、リサの姉とのこと。
ヴィクトリアが日本に来られない理由は、ドイツのペンフレンドのところへ行ったからなのだが、ドイツのペンフレンドの後ろにくっついているavec son écoleというフレーズが分からない。「彼女の学校と一緒に」ドイツのペンフレンドのところへ出発したとはどういうことなのだろう。学校で連れて行ってくれるのか。
で、日本語版を借りてみた。
「ビクトリアが ペンフレンドをたずねて ドイツへ いったので かわりに ガスパールを つれてきました」と訳してある。学校のことには触れていない。
小さな子供向けの絵本なので、日本語訳はひじょうに易しくなっている。しかし、日本語の絵本としてはこれで十分通じる、と言うか、この方がいい。
これに比べてフランス語は、とても理屈っぽく書かれている。
たとえば、リサとガスパールがウォシュレットをいたずらするところ。
フランス語を直訳すると、
「どのボタンにもさわっちゃダメよ」とママがいった。
「そこをおしてみて」と、わたし(リサ)はガスパールにいった。
となるが、日本語訳では、
「さわっちゃだめよ」と ママは いった
でも がまんできなくて おもわず おしちゃった すると……
となっている。
そして次のページで、水が噴き出す場面。
日本語訳では、
ふんすいみたいに みずが ふきだして あっちこっちが びしょびしょ!!
となっているが、原文を直訳すると、
しかし、押すべきではなかった。
なぜなら、そのせいであちこちに水があふれたから。
となる。
文法的に言うと、条件法過去を使っている(英語でいう仮定法過去完了)。
~しなきゃよかった、と日本語では簡単に言えるが、フランス語や英語では高校レベルの文法をマスターしていないと言えないのだ。でも、必要なので絵本にも出てくる。
主語、動詞、目的語が出てくるのはもちろんだが、時制も、半過去と複合過去を使いわけている。
フランス語の文法はひじょうにがっちりと体系的に組み立てられている。
子供の頃からフランス語を使うと、理屈っぽい人間が出来上がるよね。

それに比べて日本語はかなりシンプル。
それでも、同じような内容が書けてしまう。
日本語、フランス語、それぞれの書き方があって面白い。

2018/11/30 22:04 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

文体も大事



「ヴィクトリア期英国のスラムに生きる」という副題がついている。
面白そうだったので、家に帰ってきてから、覚えてきた原題The Blackest Streetsで、アマゾンで検索してみた。
「なか見!検索↓」の印があったので英語版を覗いてみた。
後ろへ後ろへと続く、息の長い文章で引き込まれた。小説の書き出しのような文章だと思った。
翻訳がたまたま図書館に新刊として入っていたので、借りてみた。
翻訳を見て、あれ? っと思った。引き込まれないのである。
原因のひとつは、関係代名詞や接続詞で繋がっている長いセンテンスを意味の塊でぶつぶつ切って訳しているからだと思う。日本語がしっかりしているし、意味を伝えるだけなら立派な文章だと思うが、この報告書のような文体で400ページ以上読むのはきつい。
だからワイズはわざわざ小説のような書き方をしているのに。
そして文章が上手い。何も知らずにこの書き出しだけ読んだら、長編小説の冒頭かと思うだろう。
ワイズのこの本は一応ノンフィクションなので、、サミュエル・ジョンソン賞のノンフィクション部門などの候補に選ばれているが、イギリスの王立協会のオンダーチェ文学賞の候補にも選ばれている。この文体ゆえだろう。

社会科学系の本とはいえ、こういう面白い本は、文学作品が訳せる訳者にお願いしたかった。社会学の本とはいっても、内容だけではないのである。楽しんで読みたい。

2018/10/14 17:19 | エッセイCOMMENT(2)  TOP

ラテン語初歩



図書館の新刊に『ラテン語初歩』というのが入っていた。
ラテン語など学習する気はさらさらないのだが、こういう本を新たに買う図書館に敬意を表して借りてみた。

借りてきてよく見ると、附箋のようなものが挟まっている。その一番上に「資料状態確認票」と書いてある。下に「書き込み 鉛筆 汚れ・シミ 」などの項目が並んでいる。
つまり本の傷み具合を図書館側で表示しているわけだ。もしこれがないと、返す時にぼくが汚したことになるかもしれないからだろう。この本は、あなたが借りる前から汚れていましたよ、破れていましたよ、というわけだ。

で、この「資料状態確認票」は、「書名:ラテン語初歩」となっていて、次にある20ほどの項目の中の「汚れ」「表紙」「裏表紙」が丸で囲んである。確かによく見ると表紙に消しゴムで消した時にできるような薄い、黒い汚れがある。裏表紙には、薄い茶色の小さなシミがある。
だが、それほど目立つものではない。これくらいなら「資料状態確認票」を挟んでおかなくてもいいのではないかと思った。図書館がこれに気づいた日付も書いてあって、平成30年7月1日となっている。

しかし、本文をペラペラめくっていて、驚いた。
赤いボールペンであちこち線が引いてある。
ま、最初の10ページくらいまでだけどね。ここでラテン語、挫折したんだろうな。
英語にはない用語なので珍しかったのか、「直説法」「接続法」「命令法」に全部アンダーラインが引いてある。いや、一人称、二人称、三人称、単数、複数にまで赤でアンダーラインが引いてある。こんなものにまで赤線を引く必要があるのか。
ていうか、そもそも図書館の本に赤線を引いてはいけないんですよ。
こういうお方は「ラテン語初歩」ではなく「社会生活初歩」を学んだ方がいい。

2018/10/07 17:53 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

古いアイテム2



NHK朝ドラの「半分青い」、たしか先週まではピンクの公衆電話だったのに、今週からはケータイを使っていた。

この間、懐かしのヒット曲……みたいな番組を見てたら、日本のラップのハシリのような『だよね』って歌をやっていて、歌詞に「ポケベル」が出てきた。

そして、久しぶりに、ユーミンの秘蔵っ子、麗美の「愛にDesperate」を聴いていたら、次のような歌詞が出てきた。

たった一枚持って出た コインが電話捜させる
今すぐ声聞きたい 角まで10メートル

ケータイがなかった頃って、「もどかしさ」が出しやすかったよね。

2018/07/01 19:10 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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