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文体も大事



「ヴィクトリア期英国のスラムに生きる」という副題がついている。
面白そうだったので、家に帰ってきてから、覚えてきた原題The Blackest Streetsで、アマゾンで検索してみた。
「なか見!検索↓」の印があったので英語版を覗いてみた。
後ろへ後ろへと続く、息の長い文章で引き込まれた。小説の書き出しのような文章だと思った。
翻訳がたまたま図書館に新刊として入っていたので、借りてみた。
翻訳を見て、あれ? っと思った。引き込まれないのである。
原因のひとつは、関係代名詞や接続詞で繋がっている長いセンテンスを意味の塊でぶつぶつ切って訳しているからだと思う。日本語がしっかりしているし、意味を伝えるだけなら立派な文章だと思うが、この報告書のような文体で400ページ以上読むのはきつい。
だからワイズはわざわざ小説のような書き方をしているのに。
そして文章が上手い。何も知らずにこの書き出しだけ読んだら、長編小説の冒頭かと思うだろう。
ワイズのこの本は一応ノンフィクションなので、、サミュエル・ジョンソン賞のノンフィクション部門などの候補に選ばれているが、イギリスの王立協会のオンダーチェ文学賞の候補にも選ばれている。この文体ゆえだろう。

社会科学系の本とはいえ、こういう面白い本は、文学作品が訳せる訳者にお願いしたかった。社会学の本とはいっても、内容だけではないのである。楽しんで読みたい。

2018/10/14 17:19 | エッセイCOMMENT(2)  TOP

ラテン語初歩



図書館の新刊に『ラテン語初歩』というのが入っていた。
ラテン語など学習する気はさらさらないのだが、こういう本を新たに買う図書館に敬意を表して借りてみた。

借りてきてよく見ると、附箋のようなものが挟まっている。その一番上に「資料状態確認票」と書いてある。下に「書き込み 鉛筆 汚れ・シミ 」などの項目が並んでいる。
つまり本の傷み具合を図書館側で表示しているわけだ。もしこれがないと、返す時にぼくが汚したことになるかもしれないからだろう。この本は、あなたが借りる前から汚れていましたよ、破れていましたよ、というわけだ。

で、この「資料状態確認票」は、「書名:ラテン語初歩」となっていて、次にある20ほどの項目の中の「汚れ」「表紙」「裏表紙」が丸で囲んである。確かによく見ると表紙に消しゴムで消した時にできるような薄い、黒い汚れがある。裏表紙には、薄い茶色の小さなシミがある。
だが、それほど目立つものではない。これくらいなら「資料状態確認票」を挟んでおかなくてもいいのではないかと思った。図書館がこれに気づいた日付も書いてあって、平成30年7月1日となっている。

しかし、本文をペラペラめくっていて、驚いた。
赤いボールペンであちこち線が引いてある。
ま、最初の10ページくらいまでだけどね。ここでラテン語、挫折したんだろうな。
英語にはない用語なので珍しかったのか、「直説法」「接続法」「命令法」に全部アンダーラインが引いてある。いや、一人称、二人称、三人称、単数、複数にまで赤でアンダーラインが引いてある。こんなものにまで赤線を引く必要があるのか。
ていうか、そもそも図書館の本に赤線を引いてはいけないんですよ。
こういうお方は「ラテン語初歩」ではなく「社会生活初歩」を学んだ方がいい。

2018/10/07 17:53 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

古いアイテム2



NHK朝ドラの「半分青い」、たしか先週まではピンクの公衆電話だったのに、今週からはケータイを使っていた。

この間、懐かしのヒット曲……みたいな番組を見てたら、日本のラップのハシリのような『だよね』って歌をやっていて、歌詞に「ポケベル」が出てきた。

そして、久しぶりに、ユーミンの秘蔵っ子、麗美の「愛にDesperate」を聴いていたら、次のような歌詞が出てきた。

たった一枚持って出た コインが電話捜させる
今すぐ声聞きたい 角まで10メートル

ケータイがなかった頃って、「もどかしさ」が出しやすかったよね。

2018/07/01 19:10 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

馬琴日記



少し前に図書館に行ったら、新刊コーナーに『曲亭馬琴日記』別巻というのが1冊だけ並んでいた。ペラペラめくってみると索引の巻らしい。肝心の日記はないのかと思い、検索してみたが見当たらなかった。別巻だけ借りる人がいるのか、と思ったのでよく覚えている。
今日、図書館に行ったら、日記が6巻ほど、別巻と一緒に新刊コーナーに出ていた。別巻を先に買ったのですね。
馬琴と言えば『八犬伝』くらいしか知らないが、漢字が並んでいて面白そうなので、第1巻を借りてきた。特に何かの役に立つということもないし、物好きが過ぎるかもしれないが、
そもそもぼくの読書は「物好き」以外の何物でもないのだから、ま、いいだろう。
「まえがき」を読む。
30年ほど前、早稲田大学図書館で所蔵していた馬琴の日記の版本を翻刻した。様々な事情でそれが未完になっていたので、当時の編者の中でただ一人存命だった柴田光彦が再編集を依頼されて完成したものだ。中央公論新社の創業20周年記念事業だという。
旧版の編者の中に懐かしい名前を見つけた。早稲田の教授だった暉峻康隆。ぼくが学生の頃、西鶴の注釈者としてよく目にした。
こういう地道な仕事を手堅くやっている学者たちがいるんですね。
頭が下がる。

2018/04/14 17:49 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

小さな活字離れ



伝記はたいてい最初が面白い。
『高橋是清自伝(上)』を書店で見て、面白そうだと思った。
破天荒な人生。一攫千金を夢見て南米まで行く。
帯を読んでいると面白そうだ。
ところが残念なことに、活字が小さい。上下2巻で、この長さで、この大きさの活字はつらい。3巻になってもいいから、あと1ポイント大きくしてほしかった。高校生や大学生で『高橋是清自伝』を買う人数と中高年で買う人数とどちらが多いか、おのずと明らかだろう。それなら、中高年向けに活字を大きくしてほしかった。
新潮文庫にできるのだから、中公にできないわけがない。
岩波文庫も、表紙をカラフルにしたり、文庫の案内書を作ったりする前に、活字を大きくしたらどうか。そのほうがよっぽど売れるぞ。
なんでこんな簡単なことが分からないのか。

ぼくの周りにも読書家はたくさんいるが、皆さん小さな活字は避けている。
学生だって大きな活字の方が読みやすいだろう。
中公や岩波の編集者がこのブログを読む確率、なんてないと思うから、こんなことを書いても無駄だろうが、ぼくが中公文庫の編集者だったら、『高橋是清自伝』の活字は大きくするよう強硬に主張しただろう。
大きくしたら売れるぞ。

活字の大きさ問題、また書いてしまった。

2018/04/09 22:02 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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