正義は勝つ、かもしれないが…



黒澤明のDVDが何枚か図書館にあったので、借りてみた。
まず、『わが青春に悔いなし』という映画を見た。
「正義は必ず勝つ」というテーマだが、ストーリーがちょっと単純だ。
戦争中に、戦争反対運動をして命を落とした学生と、友人の戦争反対運動には参加せず弁護士になった学生。戦後、命を落とした学生が賞揚されるというあらすじ。
原節子が熱演している。杉村春子もいい味出している。しかし、話があまりにも単純ではないか。黒澤らしくない。脚本を書いているのは黒澤ではないが、監督は黒澤だ。
タイトルも、内容とそぐわないように思う。
弾圧されて命を落とす学生と、政治活動には参加せず弁護士になって成功する学生。2人の役者があまりにも老けている。学生服が似合わないにもほどがある。
大学を出た後も演じる都合があったのだろうが、この年齢で学生役は無理だろう。
そして、原節子と愛し合うようになる、戦争反対を唱える学生役の役者がものすごく訛っている。この学生の、後に出てくる両親が農村に住んでいて、茨城弁か栃木弁みたいな訛りで話しているから、訛っているのかもしれないが、そういう説明は一切ない。というか、この弾圧される学生役の役者は、ほんとに訛っているように見える。
もし演技だとしたら、それはそれで素晴らしいのかもしれないが、訛りが抜けない役者という印象がぬぐえない。

2018/05/18 16:51 | 映画COMMENT(0)  TOP

妹の恋人



『妹の恋人』という映画を見た。1993年の作品。ジョニー・デップが出ている。まだ若い(ヘアスタイルと帽子から、堂本剛を思い出す)。難しい役を好演している。主役のメアリー・スチュアート・マスターの演技が光る。精神病の若い女性の役を見事に演じている。
ロマンティックで、おとぎ話のようなラブストリーだが、面白かった。
あまりお金をかけないで、脚本と演技と撮影で勝負している。上手くいっていると思う。最近の映画のようにCGを多用したり、派手なアクションシーンがあったりするわけではないが、話に引き込まれる。『レインマン』を思い出した。あれも脚本がよかった。ハリウッドもその気になれば、こういう映画が作れるのに、あまり作らないのはなぜ。
音楽もいい。主題歌はプロクレイマーズという知らないバンドだが、耳に残る。何曲か挿入歌がある。最後にジョー・コッカーが歌う歌がよかった。クレジットを見たら、スティーヴ・ウィンウッドの曲だった。道理でいい曲だ。

原題はBenny & Joon。Bennyは妹思いの兄。若い頃のバリー・マニロウを彷彿とさせる好男子、エイダン・クィンが演じている。妹の名前がJoon。ジョニー・デップは妹の恋人で、サムという役だが、日本ではデップが有名ということもあって邦題は『妹の恋人』となったのか。そもそもこれは兄妹の話でもあるし、クィンもいい味出しているのだが。

気になった点を1つ。
最近のDVDには、特典映像として、メイキングとか、監督のインタビューとかが入っているが、これがいただけない、とぼくは思う。監督が撮影の裏話をしすぎるのだ。映画で見ると、素晴らしいシーンが、実はこう撮っている、ああ撮っていると種明かしをされたのでは興ざめだ。こういうことは言わないでほしかった。
それにもっとすごいのは、映画に副音声がついていて、映画の最初から最後まで監督の解説が聞ける。映画を見ている横で、これはね……と得々としてしゃべられたのでは、いくら監督と言えども、たまったものではない。
ぼくたちは映画を作るために映画を見るのではない。裏事情などいいから、完成した作品だけを見せてもらいたい。
いい映画だっただけに残念だった。

2017/05/03 16:20 | 映画COMMENT(0)  TOP

フェリーニ



森鴎外の作品を新潮文庫で買おうと思って書店に行ったら、この本が目についたので一緒に買ってきた。壇ふみが映画に関するエッセイや小説を集めた本。かなり広い範囲から集めている。
ぱらぱらめくっていたら、塩野七生が「嘘と真実」というエッセイで、イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニについて書いていたので、ここから読み始めた。
さすが塩野さん、フェリーニの本質をぐいっと掴み出して見せてくれる。
いわく、
フェリーニの作品は嘘ばかりだ。その嘘が集まると真実になる。あれがホントだと思ったら間違う。あそこからにじみ出すことがホントなのだ。
塩野はフェリーニの想像力のすごさを指摘して、嘘をつらねながらも、真実が胸にずしんとひびいてくるような作品を作れる人は、数えるほどしかいない、という。
同感だ。
塩野はまた、フェリーニを理解するためには彼の作品を見るしかないともいう。
これも同感だ。

かなり昔だが、壇ふみの書くものが好きで、一時期、単行本はもちろん、雑誌に連載しているエッセイまで、毎号週刊誌を買って読んでいた。当時も、なかなか面白い文章を書いていたが、書き方が少し素人っぽかった。
久しぶりに、壇ふみが書いた「編者解説」を読んだら、以前のような素人っぽさがなくなり、見事なエッセイになっていた。
とくに、父親の壇一雄に、映画に出演するよう促される場面は、ほろりとさせられる。

2014/08/21 21:40 | 映画COMMENT(0)  TOP

痛快時代劇



年末、書店で早川文庫を見ていたら、C.S.フォレスターの海洋冒険小説ホーンブロワー・シリーズが目に付いた。
ずーっと昔、翻訳者の高橋泰邦が、翻訳の雑誌に連載していた海洋冒険小説の訳し方の記事を読んだことがある。そのときからずっとホーンブロワーは面白そうだと思っていた。
しかし、買うとまた本が増えるので、図書館で借りようと検索した。
文庫本はもちろん揃っているのだが、シリーズをドラマ化したDVDがたくさん見つかった。
ホームーズやポアロもDVD化しているイギリスのパピネットというところから出ている。
早速借りてみた。
おもしろい。
場所も、設定もまったく違うのに、日本の時代劇に似ていると思った。
音楽も『暴れん坊将軍』のようで時代劇っぽい。
主人公のホレイショ・ホーンブロワーは、勇気と正義感にあふれ、知略・判断力もある。
部下からの信望もあつい。
ホーンブロワー・シリーズの第1巻『海軍士官候補生』のあとがきで、高橋はホーンブロワー・シリーズを鞍馬天狗になぞらえているが、ぼくは山手樹一郎の諸作品を思い出した。たとえば『江戸へ百七十里』、『桃太郎侍』、あるいは、『又四郎行状記』など。

第1巻『海軍士官候補生』の中のエピソードだけで、『決闘』『ジブラルタルの奇襲』『公爵夫人と悪魔』の3本のドラマが作られている。現在、第4巻『戦場の恋』まで見たところ。
ホーンブロワーの世界に、すっかり取り込まれてしまった。
主演は、『キング・アーサー』『タイタニック』などに出ていた、ヨアン・グリフィス。
はまり役だ。

2014/01/04 12:22 | 映画COMMENT(0)  TOP

友だちの恋人



喜劇と格言劇シリーズの最終作(第6作目)『友だちの恋人』を見た。
この映画についている格言は、Les amis de mes amis sont mes amisというもの。訳すと、友だちの友だちは、友だちだ、となる。どこかで聞いたような文句だ。これ、格言なんですかね。
ま、とにかく、物語は、この言葉通りに進む。
ブランシュとレアは親友だ。
レアにはファビアンという恋人がいる。
ブランシュは、例によって、恋愛には自信のない、積極的に出られないタイプ。『緑の光線』のデルフィーヌのよう。恋人はいない。
ブランシュは、プールで出会ったアレクサンドルを好きになる。
アレクサンドルは、レアとファビアンの共通の友人で、女たらしだ。アドリエンヌという恋人がいる。
ブランシュとファビアンは、共通の趣味も多く相性がいい。
ファビアンはしだいにブランシュに惹かれていく。
しかし、ブランシュは、アレクサンドルが思い切れない。
一方、アレクサンドルは、ブランシュのようなタイプに興味はない。レアに気がある。
で、くっついたり、離れたりがあって、結局、ブランシュとファビアン、アレクサンドルとレアのカップルが出来上がり、めでたし、めでたしとなる(もっとも、アドリエンヌだけは貧乏くじを引くことになるが)。

アドリエンヌの役は、『飛行士の妻』でルシーを演じたアンヌ=ロール・ムーリが演じている。ほっそりした美人で、ルシーのときとは別人のようだ。しかし今回は台詞もあまりなく、完全に脇役だ。5人のキャストの中では、存在感が薄い。
彼女の魅力がほとんど出ていない。喜劇と格言劇シリーズの中で、ぼくがいちばん好きな女優だけに、残念だ。

レア役のソフィー・ルノワールは、『美しい結婚』でヒロイン、サビーヌの妹役で出ていた。誕生パーティーを開いてもらったときに、ちょっと挨拶に出てくる程度で、台詞はほとんどなかったと思う。ここでは大人の女性になって登場。演技も上手いし、なかなかの美人だ。
名前からも分かるとおり、ソフィ・ルノワールは、印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの曾孫だ。また、コメディアンのピエール・ルノワールの孫であり、映画監督ジャン・ルノワールは大叔父で、映画の撮影カメラマン、クロード・ルノワールが父親である。
87年の『友だちの恋人』以来、ほとんど映画に出演していない。96年と2000年~2003年に、テレビドラマに出演している。映画は、2005年にEspace détenteに出演しているだけだ。

主役のブランシュを演じているのは、エマニュエル・ショーレ。フルブライト留学生として、ニューヨークに留学。2000年にはアメリカの市民権を獲得して、大学で演劇を教えている。
フルブライトに選ばれるくらいだから英語はかなりできるのだろう。“I want to go home”、“All the Vermeers in New York”など、アメリカの映画に出ている。

喜劇と格言劇シリーズで、明確にハッピーエンディングなのは、この『友だちの恋人』のみだろう(『緑の光線』も希望を残した終わり方ではあるけれど)。
まるでシェイクスピアの喜劇を見ているようだ。たとえば、『お気に召すまま』とか、『夏の夜の夢』とかを思い出す。
最後のシーンも、明るく、ユーモラスで、シェイクスピア劇の幕切れを思わせる。
終わりよければすべてよし』といったところか。

2013/08/20 21:14 | 映画COMMENT(0)  TOP

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