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月に添い寝の



お二人の話は徹子の部屋でお馴染みだが、俳句についてだけこれだけ語ったことはない。

富士眞奈美が『奥の細道』は男性に人気があると言っている。
なるほど言われてみればそうかもしれない。
『奥の細道』、20代のころから愛読しているが、そういうふうに考えたことはなかった。

富士眞奈美、テレビを見ていても分かるけど、ほんとに人柄がいいよね。それに話が面白い。
吉行和子は文章が上手い。日本エッセイストクラブ賞を受賞しているんですね。
父親と兄が作家で妹が詩人だから、文才があるのは当たり前か。

『奥の細道』の冒頭の引用で2箇所間違えていると思う。暗唱していたのをそのまま載せたのか。それから、富士眞奈美が嵐山光三郎の解釈が面白いと言っているけれど、話を面白くしている分、ぼくにはつまらなく感じられる。芭蕉を俳聖だなんて崇めるつもりはないけど、面白すぎる解釈もどうかな。
ふつうに読めばいいんじゃね?

吉行和子の句がいい。

松島の月に添い寝の一夜かな
語ること多く残して寒椿

富士眞奈美は俳句を勉強しているだけに、作りこみすぎて、上手いんだけど、響かない。

2018/10/18 21:10 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

ガバリと寒い海



俳句が流行っている。
ぼくの友人も一人俳句をやっている。
テレビのランキング番組でも俳句のコーナーがある。
夏井いつきの毒舌が面白い。
芸能人でも、良い句を読む人がいる。
ところが、である。
西東三鬼の句を読むと、プロとアマの違いに愕然とさせられる。
『西東三鬼全句集』から初期の句を引く。

昭和10年
聖燭祭工人ヨセフ我が愛す
燭寒し屍にすがる聖母の図
咳(しわぶ)きて神父女人のごと優し

昭和11年
小脳をひやし小さき魚をみる
水枕ガバリと寒い海がある
不眠症魚は遠い海にいる

微熱ありきのふの猫と沖を見る

右の眼に大河左の眼に騎兵
汽車と女ゆきて月蝕始まりぬ

算術の少年しのび泣けり夏

友はけさ死せり野良犬草を嚙む


戦前によまれたものとは思えない。
モダンである。凄みもある。
575にとらわれない。
思いがあふれて言葉があふれる。

2018/10/02 22:12 | 本の紹介COMMENT(2)  TOP

古今和歌集



今度は、新潮日本古典集成の新装版から、『古今和歌集』を読んだ。通して読むのは初めて。
歌の配列がよく考えられている。千年も前にこれだけの編集力があったとは驚きだ。
というか、文学は科学と違って、現代が一番進んでいるわけではないから、こういうことがあっても不思議ではないのかも。
紀貫之の編集方針は1本筋が通っていてぶれない。通して読むとよくわかる。
校注者の奥村恆哉の現代語訳が優れている。
学者が古典を現代語訳すると無味乾燥なものになることが多いが、奥村の訳は和歌の言葉遣いを上手に現代語に移している。

また、奥村は解説で『古今和歌集』の歌は明晰だという。あいまいな表現を使わない。言葉から明確にイメージがわく歌を選んである。この辺も貫之の批評眼が働いている。
例えば、「おぼろ月」という言葉が使われている和歌が全く採られていないという。

また、万葉集の大伴家持の有名な歌、「うらうらに 照れる春日(はるひ)に ひばり上がり 情(こころ)悲しも 独りし思へば」が採られていないという。(現代の教科書にも出てくる歌で、日本人好みの歌だから、ご存知の方も多いと思うが……。)
なぜなら貫之は、あるいは『古今和歌集』は、こういう感傷を嫌うからだという。
そう言えば、『土佐日記』も感傷を嫌っているよね。

『万葉集』が男性的で、『古今和歌集』が女性的という説は、江戸時代の国学者賀茂真淵が唱えたものだが、虚心に読むと『古今和歌集』は必ずしも女性的とは言えない、とぼくには感じられる。
貫之の編集のセンスと批評眼は、むしろ男性的であり、現代的である。

2018/09/20 19:09 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

文明と文化



「第一章ある文明の幻影」で言っていることが面白い。
文化は生き残るが、文明は滅びるというのだ。
これは卓見である。
蒙を啓かれた。

滅びた文明を知るには外国人が書き残したものを読むしかないという。
なぜなら当時の人たちは、あまりにも当たり前すぎて記録に書き留めていないからだという。
そこで渡辺は幕末から明治に日本にやって来た数多の外国人の記録を読み解いて、失われた文明について考察する。
いわゆる「古き良き時代」について考察しているが、「昔はよかった」的な書き方はしない。
渡辺は論理の人であり、情緒に流されないのだ。

大部の本で活字も小さいから通読するのは大変かもしれないが、拾い読みするだけでも面白いだろう。

2018/09/05 16:36 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

人生の1日を描く



Mothering Sunday。
使用人が1日だけ母親の元に帰れる日。
ジェーンは6月みたいな陽気の3月のマザリング・サンデーを回想する。
3月なのにぽかぽかと暖かい。
ふりそそぐ日の光の中で、バークシャーの自然は悲しいほど美しかった。

回想を駆使して物語は進行する。一字一句無駄のない文体。ストーリーの急展開。苦いユーモア。
生きることの哀しみ……みたいなものが行間から伝わってくる。
イギリスの作家は一筋縄ではいかない。実に味わい深い話になっている。
現代日本にこれだけのものが書ける作家がいるだろうか。もっとも、ぼくは日本の現代作家をあまり読まないのでよくは分からないのだが。いたら誰か教えていただきたい。

ストーリーは書かない。書くと、読んだときに面白くなくなるから。
ためしに読んでみてほしい。

イギリスの現代作家の書くものは、英語で読むとかなり手ごわい。とくに、ウィリアム・ゴールディングやジュリアン・バーンズ、そしてこのグレアム・スウィフトなどは。
回想から回想へと自由に時間を飛び越える、自在な場面転換、そこはかとないユーモアなどが読み取れないと作品が味わえないからだと、真野泰の翻訳を読んでいてよく分かった。
ぼくなどがイギリス現代文学を原文で読もうとするのは、身の程知らずなのである。

2018/08/16 15:16 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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