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ランメルモールのノルチア 2



ドナルド・キーン編『昨日の戦地から』という本を書店で見つけた。面白そうだったので読んでみた。太平洋戦争終結直後の様子を、アメリカ軍の日本語通訳将校だった若者たちが、アジアの各地から手紙で報告しあうというもの。東京、沖縄、青島、韓国など彼らが一時的に滞在しているところから、そこで起こった出来事や人々についてなどを書いている。
その中の一人、ケーリが高松宮と何度か面会して、戦後の天皇のあり方について助言するところが面白かった。歴史が作られていく現場に立ち会っているようでなかなかスリリングだ。

こんなわけで、最近ちょっとドナルド・キーンづいていたので、刊行され始めたばかりの著作集が目に付いた。
これは図書館で借りる。
第1巻に収められている『日本の文学』を読んでいると、「ラマムーアの花嫁」に言及しているではないか。日本語のタイトルは「春風情話」というのだそうだ。
岩波の新日本古典文学大系によると、坪内逍遥が学生の頃に、スコットの『ラマムーアの花嫁』を翻訳したものだという。全訳ではなく途中まで。
解説によると、作品として発表されたものではないらしい。逍遥自身もこんなものが刊行されるのは不本意だろうが、資料として刊行した、というような意味のことが書いてある。
面白いのは挿絵だ。
スコットランドの話なのに、登場人物が皆着物を着ている。
馬琴の小説か何かに出てくるような出で立ちだ。

話をキーン著作集に戻そう。
第1巻には、『日本の文学』、『日本文学散歩』、『古典の愉しみ』などが収録されている。
それぞれ、吉田健一、篠田一士、大庭みな子が訳している。
訳者名が書いてないところは、キーンが日本語で書いているところか。講演の記録(『古典を楽しむ 私の日本文学』)も収められているが、これは明らかにキーンさんの語り口だ。

それに対して、『日本の文学』の文体は、吉田健一の文体だ。『古典を楽しむ 私の日本文学』の口調とまったく違う。ここまでコテコテだと、かえって爽快。吉田健一という人は、何を訳しても、吉田健一なのですね。


内容についてひとこと。日本文学を西洋の視点で捉えていて面白い。どっちが先かわからないが、丸谷才一がよく言っている日本文学の捉え方に似ている。

2012/05/07 18:08 | オペラCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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