ゴッドファーザーからシカゴ 2



『洋楽訳詞隊』というブログによると、Saturday in the parkは、独立記念日の土曜日の公園の様子をただ歌った歌ではなく、反戦歌だという。
この曲は1972年、ベトナム戦争終結間近に発表されたそうだ。
公園でのんびり過ごしている人がいる一方で、戦場で命をかけている人もいるということらしい。

なるほど、そう考えると、「ぼくが世界を変えるのを手助けしてくれる?」とか、「ぼくは長い間今日という日を心待ちにしていたんだ」などというフレーズが意味を持ってくる。
のんびりとした独立記念日の風景を描くことが、反戦のメッセージとなるのだ。
そういえば、『7月4日に生まれて』というベトナム戦争の反戦映画があった。ウィキペディアによると、トム・クルーズ扮する主役の青年が、1972年の共和党大会に向けてデモ行進するというシーンが最後にあるという。

曲調が変わるところの歌詞の訳が、CDのものだと、いまひとつ飲み込めない。
まず英語の歌詞。
Slow-motion riders fly the colours of the day
A bronze man can tell stories his own way
Listen, children
All is not lost, all is not lost
CDの訳詞。
スローモーションライダーは空に今日の色を描き
ブロンズ色に日焼けした男は独特の方法で話を続けている
子どもたちよ、よくお聞き
すべてが失われたわけではないんだ
そう、すべては失われていない

ネットで検索してみたが、たいていの訳詞サイトでは、このCDの訳を下敷きにしているようで、よくわからない訳になっている(失礼だが、おそらく、訳している本人もなんのことだかよく分からないに違いない)。
その中で、先にあげた『洋楽訳詞隊』の訳がわりとよくできているように思う。少なくとも意味がすっきりと通る。

のんきなライダーは独立記念日の旗を揚げているよ
ブロンズ像の男(ワシントン)の言葉は今も生きているんだろうか
『子どもたちよ耳を傾けな
戦争に負けたからって
すべてを失ったわけじゃないんだ
すべてを失ったわけじゃないんだ』

『洋楽訳詞隊』は訳しか挙げていないので、原文を見てぼくが気づいたことを書く。

Slow-motion riders fly the colours of the day
coloursの綴りが、なぜかイギリス式になっている。シカゴはアメリカのバンドなのだが。最初に歌詞を書き取ったのがイギリス人だったのか。アメリカ式ならcolor。
colourは、複数形で国旗という意味がある。定冠詞をつけてthe coloursといっているから、 ここはアメリカ国旗(星条旗)のことだろう。flyは凧などを揚げるという意味。ここでは国旗を翻しているという意味だ。the dayと定冠詞がついているので、「その日」とは独立記念日のこと。
Slow-motion ridersは「のんきなライダー」ではないように思う。
大きなバイクに国旗を立てて、風になびかせながら、公園の向こうのほうを走っていく様子を言っているのではないか。ずっと遠くを、隊列を組んですぅーっと走っていくので、遠くから見ると、スローモーションのように見えるのである。大きなもの、たとえば飛行機が滑走路を走っていって離陸する際など、遠くから見ているとゆっくりと動いているように見える、あれですね。

A bronze man can tell stories his own way
ブロンズ像の男が初代アメリカ大統領ワシントンだということは、次の台詞から分かるのだろう。だが、ワシントンがこんなことを言ったのかどうかは、ぼくには確認できなかった。ワシントンの伝記などを読むと出ているのかもしれないが、とてもそんな余裕はない。
ただ、これがワシントンならhis own way(独特の話し方)というのは、ワシントンがごく若い頃からほとんど総入れ歯だったことと関係があるのかもしれない。
ただ、ぼくには、a bronze manというのは、銅像のまねをするパーフォーマンスをする男のことなのではないか、なんて気も少しする。土曜日の公園だもの、ストリート・パフォーマーがいてもいい。

All is not lost
ワシントンが『失楽園』を読んでいたかどうか知らないが、All is not lostは、ミルトンの『失楽園』から借用したのかもしれない。
第1巻の105行目から110行目にかけて次のような詩句がある。
平井正穂訳で引く。

一敗地に塗(まみ)れたからといって、それがどうしたというのだ?
すべてが失われたわけではない――まだ、不撓不屈の意志、
復讐への飽くなき心、永久に癒すべからざる憎悪の念、
降伏も帰順も知らぬ勇気があるのだ! 敗北を喫しないために、
これ以外何が必要だというのか? いかなる怒り、いかなる力が
彼にあろうとも、わたしを取り拉(ひし)ぐ栄光を彼に許すわけには
いかんのだ。……

これはサタンが、神に天国から追放されたときに言う台詞だ。
Saturday in the parkの作詞者がここまで知っていて、All is not lostと言っているなら、この歌は反戦歌ではなく、戦争に負けるもんか、ということになってしまうが、その可能性は低い。この歌は、当時の反戦気分を反映している、ただのメッセージソングだろう。

2013/12/30 22:17 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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