異邦人



太陽がまぶしかったから、というのは知っていた。
しかし、『異邦人』を読んでみると、理由はそれだけではなかった。
ムルソーがアラブ人を射殺するまでには、様々ないきさつがあり、心の動きがあった。
第1部では、殺人を犯すまでのいきさつをムルソー自身が語る。

新潮文庫の裏表紙の解説によると、
「母の死の翌日に海水浴に行き、女と関係を結び、映画を見て笑い転げ、友人の女出入りに関係して人を殺害し…」
とある。
第2部は、ムルソーの目から見た裁判の様子が語られてゆく。裁判では、ムルソーがいかに普通でないかを検察官が責め立てるが、ぼくたちは、いや、少なくともぼくは、こういう犯人像に慣れてしまっているので、ムルソーを糾弾する検察官の激しさに多少鼻白む。
ま、これは今から見ればということで、当時はムルソーみたいなキャラクターは大人の社会からは理解不能の「異邦人」だったのだろう。

フランス語版グーテンベルクともいうべきE-bookに収録されていたので、プリントアウトして、原文と日本語を参照しながら読んだ。
グーテンベルクの英語版は、画面いっぱいに書かれていて、ページの概念がないので読みにくい。いっぽう、E-bookのほうは、両面印刷でプリントアウトすると、ちょうど1冊の本のようになるので非常に読みやすい。活字も大きくてよい。
日本語の翻訳と見比べながら読むと、訳者の窪田啓作のうまさがよく分かる。

終りの方で、死刑を宣告されたムルソーのところに、司祭がやってきて、神に祈るようムルソーを説得するが、ムルソーは頑として司祭の言葉を受け入れない。
ここでの、生と死に関する、司祭とムルソーの哲学的な問答が興味深い。

新潮文庫版では、原文にない描写が2、3翻訳されている。『異邦人』の英訳版にもこの部分はない。文庫の解説では何も断っていないが、原書にいくつかの版があるのだろうか。

2015/07/18 22:08 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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