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啄木のゼム



『悲しき玩具』の初めのほうに次のような歌がある。

やみがたき用を忘れ来ぬ――
途中にて口に入れたる
ゼムのためなりし。

この「ゼム」というのが何だかわからない。新潮文庫には、この言葉の「注」がないのだ。
おそらくgemと綴るのだろうと見当はつくが、gem(ジェム)は「宝石」という意味。
この歌の文脈には合わない。
で、ちょっと調べてみると、「まちこの香箱」というブログで、「ゼム」について書いていた。
明治の頃の雑誌の広告を紹介しているところで、「ゼム」のことが出てくる。広告の写真を見ると、カタカナで「ゼム」と書いた下に、gemと綴っている。
いわゆる口中清涼剤のハシリのようなものらしい。この少し後には仁丹が出てくる。
いまでも、小さな粒で口に入れてスッとするものがいろいろと売られている。アレですね。
「まちこ」さんによると、漱石が満州と韓国(朝鮮)を旅した時の紀行文「満韓ところどころ」にも出てくるという。
確かに、(九)の最後のところで漱石は「ポケットからゼムを出して呑ん」でいる。
全集の注を見ると、ゼムを説明した後に、8巻の注を参照するよう書いてある。漱石全集第8巻は『行人』だ。
うーん。漱石全集は注も含めて、メモを取りながら全巻読んだのだが、「ゼム」のことは記憶にない。
ま、いいか。
とにかく謎が1つ解けた。「まちこ」さん、ありがとう。

啄木の歌は自然と耳になじんで、高校生の頃からいくつも暗唱できたのに、学生時代に全集から日記と文集の巻を買わされて、専門課程の授業を受けたときは、ほとんど興味がわかなかった。文学は教科書、あるいは教材になると、途端につまらなくなるのですね。
しかし、今回読み返してみて、あらためて啄木の歌はいいと思った。
啄木は27歳で亡くなっている。したがって、歌集に収められている歌は20代で詠んだ歌だ。
巻末の年譜を確認していたら、誤植を見つけた。
「明治四十三年(一九二〇)二十五歳」となっているが、明治43年は1910年だ。

2015/08/31 12:28 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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