黒髪



『新編泉鏡花全集』は、作品の舞台となった地域別に編集している。
たとえば、第1巻は金沢、第3巻は東京といった具合に。
で、第10巻には、飯坂温泉、遠野など東北を舞台とした作品が収められている。
鏡花の独特の文体はここでも健在で、読んでいるとうっとりしてくる。しかし、金沢や東京に比べて、何度か旅行しただけのあまりなじみのない土地だからか、あまりうまくいっていない作品もある。
その1つが「黒髪」という作品だ。
前半は、親のない美少女が地元の商人に引き取られて、そこの娘とともに育てられるという筋で、なかなかよい。
ところが、東京へ出てきてからの話がどうもいまひとつだ。
特に最後が尻切れトンボ。それまで全く登場していなかった書生が出てきて、中途半端に終わる。前半がいいだけに残念だ。さすがの天才鏡花でも、後半はいいストーリーが思いつかなかったのかもしれない。というか、そもそも後半はいらなかったのではないか。東北が舞台の作品なのだから、東北だけで話が完結したほうがよかった。
それに、前半で美少女、三葉子(みわこ)を引き取る松尾屋の息子、松雪謙吉という名前を覚えておいてほしい、あとで出てくるからと言っておきながら、最後まで謙吉は出てこない。
この辺も作品構成が雑である。

2015/10/12 14:32 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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