FC2ブログ

経済学者だってロックを聴く



英語のクラスでニューヨークタイムズの記事を編集してテキストにしたものを読んでいる。この間は、経済学者のポール・クルーグマンのコラムが出てきた。なかなか手ごわい英文で、これを高校生が読めるのかと思うのだが、高校のテキストとして作っているのだから、このレベルの高校生もいるということでしょうね。
で、クルーグマンさん、なんの断りもなくコラムの中に次のフレーズを書く。
Meet the new boss, same as the old boss.

このフレーズ、引用符もついていなければ、イタリック体になっているわけでもないが、The WhoのWon’t Get Fooled Againからの引用である。
邦題は内容を汲み取って「無法の世界」。直訳すると「もう騙されないぞ」という感じかな。
そしてクルーグマンが引用しているフレーズは、歌の最後に1度だけ歌われる。
「革命などで支配者が変わっても、結局、新しい支配者もまた以前の支配者と同じような行動に出る」と言っているようだ。だから「もう騙されないぞ」なんですね。
オーウェルの『動物農場』を思い出させる。

The WhoのWon’t Get Fooled Againは少なくとも英米では広く知られているようだ。スーパーボールのハーフタイムショーでThe Whoが歌っている映像があるが、ロジャー・ダルトリーがWon’t Get Fooled Againと歌うところで、観客も一緒に歌っている。
こういう背景があるから、クルーグマンさんは、いきなり引用しているのだろう。竹中平蔵が演歌の歌詞を引用するようなものでしょうか。

これで思い出すのが、別宮貞徳。もうずいぶん前になるが、遠慮なく誤訳を指摘することで知られていた。別宮さんが誤訳を指摘していたのは、社会学の本や一般向けの科学書などが多かった。なかでも印象に残っているのは、英米人なら誰でも知っている常識を知らないための誤訳を指摘していたところだ。たとえば、アメリカの物理学者でも、ギリシャ、ローマの古典やシェイクスピアなどを読んでいる。クルーグマンのようにロックが好きな学者だっている。ところが、日本の翻訳者は、その道の専門家ではあっても、柔らかい知識がないんですね。で、軽く冗談を言っているようなところを、大仰に訳してしまったりする。
今はグーグルがあるから、こういうことは減ってきていると思う。
しかし、英文を読んでいて、これは何かの引用ではないかという勘が働くことは必要だろう。でないと、グーグルで調べないから。

2017/10/26 22:44 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

 | BLOG TOP |  NEXT»»