室町のラブソング



「閑吟集」「宗安小歌集」は、ともに室町時代の歌謡集。これらは安土桃山時代の「隆達節」へと続く。貴族社会では、和歌集がラブソングのスタンダードだったが、室町時代に入って、庶民のラブソング集が出た。長くても10行くらい、たいていは1、2行の短い詞である。メロディを付けて歌ったものらしい。
「閑吟集」「宗安小歌集」に収録されている歌は、すべてラブソングと言っていいだろう。和歌のように、典雅で婉曲な表現の仕方ではなく、かなりストレートに恋愛を歌っている。ときにエロティックでさえある。どちらかというと現代の演歌やJポップに近いだろう。
例えば、1番目の歌はこんな風。のっけから艶っぽい。

1
花の錦の下紐(したひも)は
解けて、なかなかよしなや
柳の糸の乱れ心
いつ忘れうぞ、寝乱れ髪の面影

スキャットを思わせるこんなのもある。むやみに親しくすると、別れたあとが大変だ、といった内容。

119
ただ、人には馴れまじうものぢや
馴れて後(のち)に
離るる、るるるるるるが
大事じやるもの

ここには引用できないようなきわどい歌も多い。
古典の注は、こういう時たいていぼかして書くことが多いが、ここでは作品の性格上、わりとはっきりと解説している。

最後に、恋人たちの弾む息づかいが聞こえてきそうな歌を引く。

282
あまり見たさに
そと隠れて走(はし)てきた
まず放(はな)さいのう
放して物を言はさいのう
そぞろいとほしうて、何とせうぞなう

逢いたくて仕方がなくて、隠れて男のもとへ走ってきた女性。
おとこに強く抱きしめられて、そんなに強く抱きしめたら話ができないじゃないの。
も少し力を緩めてよ……

今でも世の中ラブソングであふれていますが、日本人のラブソング好きは、昔から半端なかったんですね。

2018/07/16 17:57 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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