FC2ブログ

ギケイキ? ギケイキ!



ストーリーが面白い。
そもそも『義経記』が面白いエピソードで満ちているからね。
ただし、『義経記』を原文で読んだらそうそう楽しめないかも。旧仮名遣いが読めれば何とかなるかもしれないが。
あ、そうそう。『義経記』は、「みなもとのよしつね」を描いているのに、「よしつねき」ではなく、なぜか「ぎけいき」と音読するのが習わしだ。
『義経記』という、ストーリーがメチェクチャ面白い話を、町田は現代の言葉で語る。かなりくだけた現代の言葉で語る。高校の古典の先生が、現代の生活に引きつけて高校生にもなじみのあるように語ったら、こんなふうになるかな。だから平気で、カタカナ語や外国語を入れるし、ラインしたとかメールしたとか、まで書いてしまう。
現代を生きている日本人にしか分からないようなギャグも満載だ。
これが面白い。抱腹絶倒間違いなし。
「長崎は今日も雨だった」の3番のサビを引用したり、ルールルルルッルーと「サザエさん」のテーマを引用したり、ピンクレディーの「私の名前はカルメンです!」なんてのが出てきたり、それはもうむちゃくちゃ。「たった一つの花」だの、「ひるどき日本列島」だの、「天知茂」だの、分かる人は分かるだろう。では「メンタルを病んだ本郷猛のようだ」は分かるかな。
こういう部分から真っ先に古びていくと批判しているレビューもあるが、町田はそんなことは百も承知だろう。
古典の先生が現代の高校生に、つまり町田という小説家が現代の日本人にと言い換えてもいいわけだが、『義経記』の面白さを伝えたいと強く思うとき、そんなことはどうでもいいのだ。まずは現代の小説家は現代の読者に向けて書くのではないか。将来作品が残るかどうかなど二の次ではないだろうか。
しかしまあ、百年くらいたって、この作品に注を付ける文学研究者は大変だろうな。分からなくなっていることがほとんどだろうし、ギャグやジョークを解説するのはオモロくないよ。
今のうちに誰か注を付けておいてあげる?

とはいっても冗談ばかり言っているわけではない。話の運びが上手い。戦闘シーンの描き方も真に迫っていて息もつかせぬ。一気に読ませる。そして『ギケイキ②』では、泣かせるシーンもある。江田源三が死んでゆく場面は涙を絞る。

残酷な場面や、神罰を信じる場面では、義経の注釈が入る。ア、忘れてましたが、『ギケイキ』は全編、義経が語るという形式で話が進みます。
現代から見ると、残酷だ、人権を無視している、あるいは神の罰が当たるなんてことがあるか、と思われるかもしれないが、当時はそれなりに意味があった、などと義経さんが解説してくれるんですね。
『平家物語』もそうだが、軍記物って、武士が着ている鎧や兜、持っている弓などの武器の描写が微に入り細を穿っていて、これでもかと出てくる。正直言って読んでいてウンザリすることもあるが、町田は逃げない。これを現代のファッションに引き寄せて、語ってみせる。これもけっこうおもしろい。
ま、この辺も、高校の先生風っちゃ、先生風ですね。

また、ラストで静がさまようシーンは美しい。
ふざけているようで、押さえるところはきちんと押さえている。
この調子で頑張ってほしいな。

なお、『ギケイキ』は全部で4巻になる予定らしい。
続編が楽しみだ。

2018/10/28 20:10 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

 | BLOG TOP |  NEXT»»