ノルウェイの木 2



『ノルウェイの森』についての2010年に書いた、2つ目のブログです。
今、読み返してみると、林望の解釈もかなり強引だと思いますが、ここに引用してみます。

リンボウ先生こと、林望が、ビートルズナンバー「ノルウェーの森」の歌詞を解釈しているエッセイがある。
『愛詩てる。』という本に収められている「森に火を放つ」というエッセイだ。
この歌の歌詞の解釈は、ここにすべて言い尽くされていると思う。

ウィキペディア、あるいはブログなどにも、「ノルウェーの森」に関するゴシップ的な話など、周辺のことは書いてあるが、この歌全体の解釈が書いてない。
Norwegian woodが、ノルウェー産の木材、またはその木材で作った家具を指していることは、ウィキペディアにも、ブログなどにも載っている。
しかし、歌の核心にまで踏み込んで解釈しているのは、ぼくが見た限り林望のエッセイだけだ。

というわけで、林望のエッセイを読んでいただければわかることなのだが、わざわざ『愛詩てる。』(2002)を探し出して読むのもわずらわしいだろうから、かいつまんで紹介しよう。
以下に書くことはほとんどが林の受け売りである。ぼくの意見も多少は入っているが。

では、まず歌詞の内容をおおざっぱに説明する。
まず、出だし。

「ぼく」はある女の子を引っ掛けた。いや、彼女に引っ掛けていただいたというべきか。
彼女はぼくに部屋を見せてくれた。

英米では、ハウスツアーと称して、初めての客には家の中を案内して歩きますね。She showed me her roomというのはそういう状況を言っている。つまり「ぼく」は、彼女の部屋に初めて行ったということがわかる。

そして、Isn’t it good? Norwegian woodとなる。
これは「ぼく」の感想でしょう。「へえ、素敵だね、ノルウェー製の家具で統一してるんだ」なんてことを言ったわけだ。ここではまだ「ぼく」は期待してるから。

彼女は泊まってってよ、まあ、座ってよ、なんて言うんだけど、椅子が見当たらない。
「ぼく」は仕方なく、暖炉の前のラグの上に座った。
そして、その時が来るのを待っている。
ところが、ワインを飲みながら、話し込んでいるうちに2時になってしまった。
で、彼女、「もう寝る時間だわ」と言って、寝室に引き上げようとする。
そして、明日は仕事があるんだよね、と言ってから、彼女は笑いだす。

林によると、この「笑い出す」というのがトドメの一句だという。
「何言ってんのよ。あんた、なんか変な期待でもしてたわけ」という感じなのだそうだ。

それで「ぼく」は、バスルームまで這って行って、そこで寝る――みたいな気分だった。(実際は、暖炉の前のラグの上で寝ただろう、というのが林の意見。) 
翌朝起きたら彼女はもう仕事に出かけていて、いなかった。
「ぼく」は暖炉に火をつけた。
そして、ここでもう一度、Isn’t it good? Norwegian woodというフレーズが出てくる。

さあ、これをどう訳すか。
林の解釈の線でいくと、「なかなかいいね、ノルウェーの木は(よく燃えるよ)」てなことになるだろうか。
林の解釈だと、この女性は、北欧風の家具なんかで部屋のインテリアを統一する「高尚な趣味」の持ち主だ。そして、いやみなインテリ。
ワイン、部屋に椅子がなくラグの上に座る生活、というところから、彼女は、ちょっと気取ったインテリ階層に属していると判断できるという。
そういういやみな女へのせめてもの抵抗が、ノルウェー製の家具を暖炉で燃やすことだったというのである。

原詩では
This bird has flown(この鳥は飛んでいってしまった)
So I lit a fire(だからぼくは火をつけた)
Isn’t it good, Norwegian wood

となっているだけで、暖炉も出てこないし、家具を燃やしたなんてことは書いてないのだが、ネイティブならその辺のところは見当が付くというのだ。

歌というのは言葉数が限られているから、ネイティブなら誰でもわかるようなことは書かないのが普通だろう。また書かないから、いろいろと想像が膨らむということもある。

昔、百恵ちゃんが「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」と歌うのをテレビで見ていて、子どもにこんな歌を歌わせていいのか、と母が憤慨していたのを思い出した。
ネイティブなら、行間が読めるのである。

「ノルウェーの森」は、皮肉なユーモリストだった、若い頃のジョンの面目躍如といった内容である。そしてジョンもまた、ネイティブなら行間を読んでくれというつもりで、この詩を書いているようだ。

「ノルウェーの森」というタイトルはなくならないだろう。
ロマンチックで、情緒的で、あまりにも日本人好みだから。
しかも村上春樹の小説、そしてさらに映画が加わるとなれば、誰がなんと言おうと「ノルウェーの森」だろうな。

付け足し。
これを書いたずっとあとで、若いイギリス人に『ノルウェイの森』の原詩を見せて感想を聞いたことがある。林の解釈も説明してみたが、よくわからない、というのが彼の返事だった。

2016/04/27 17:16 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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