鐘とウグイス



この間、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』が読みたくなったので、図書館に行った。
この本、昔は新潮文庫で出ていた。確か1冊が500ページくらいあって、全部で4巻に分かれていた。長かったけれど、読み通した記憶がある。高校生の時だった。
ずいぶん時間がたっているから、いまではほとんど何も覚えていない。
しかし、面白かった、というか、感動した、という記憶だけはある。
で、今度は最初の1ページだけでも、フランス語の原文と日本語訳を対比しながら読んでみようと思ったのだ。
ところが、いまどきロマン・ロランは流行らないのか、文庫本等では手軽に手に入らない。そこで図書館へ行った。
古い全集ならあるのだ。ちょうど昼時だった。
コンピューターで検索していると、風に乗ってお寺の鐘が聞こえてくる。
ちょっと虚を突かれたが、図書館の横の坂をしばらく降りていくと、お寺があるのを思い出した。このお寺では、6時と12時と18時に鐘を突く。
その12時の鐘が聞こえてきたのだ。
ちょっと不思議な感じがした。ジャン・クリストフとお寺の鐘の取り合わせ。

ジャンと打てば鐘が鳴るなり○○寺

なんて、チョーくだらないハイクが浮かんだ。


今日、図書館で外国文学の棚を見ていたら、ウグイスの鳴き声が聞こえてきた。
図書館の奥の書棚には外国文学が並んでいる。
『ギリシア詞華集』とか、『はじめて学ぶラテン文学史』とか、レーモン・クノーとか、バルガス・リョサとか、パトリック・モディアノとか、適当に書架をブラウジングしていると、ホーホケキョ、ホーホケキョとひっきりなしに鳴いている。
最初は、図書館がスピーカーから流しているのかと思った。それくらい鮮明に聞こえる。しかし、時々鳴きやんだりしているし、鳴いたり鳴きやんだりの間隔が不規則だし、音も間近に聞こえる。どうも壁についている換気扇の向こうから聞こえてくるらしい。
その辺を散歩していて、ひと声聞こえてくのは、なかなか風流でいいが、こうひっきりなしに鳴かれては、うるさくておちおち本も選んでいられない。

家に帰ってから地図で確認すると、図書館の後ろは、お寺の墓地と隣接しているのですね。
図書館を出てから、200メートルほど坂を下るとお寺がある。道の両脇には家が建っている。
家に隠れて見えなかったが、お寺からずっと図書館まで墓地が伸びていたのだ。
図書館の一番奥の壁の向こうは、お寺の墓地だった。窓がないので見えないが、木立が生い茂っているらしい。ウグイスの格好の営巣地だ。
というわけで、本を選ぼうとしても、ホーホケキョ、ホーホケキョという鳴き声に、心乱される。

となり鶯啼いて 緑紅に映ず

またまた、チョーくだらない詩句が浮かぶ。

2016/05/03 17:53 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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