家族手帳



パトリック・モディアノをフランス語で読むプロジェクト第2弾は、『家族手帳』だ。これも『イヴォンヌの香り』同様、ほとんど日本語訳で読んでいる。読みやすい日本語で訳してあると思う。しかし、ときどき日本語としてよくわからない、あるいはすんなり意味が取れない箇所がある。まだ60ページしか読んでいないのに、もう5、6か所ある。
誤訳も1か所ある。37ページの2行目に、
「トト、それで?」とマリニャンが口火を切った。
とある。
トトと呼ばれているのはマリニャンなので、マリニャンが自分に向かって「トト、それで?」というのはおかしい。翻訳の前後の文章から考えても、マリニャンをトトと呼んでいるのは、ウォーだ。日本語訳だけを読んでも気づく間違いなのに、著者が大学の授業で一緒に翻訳したという学生たちも、編集者も気付かなかった。
念のため原文で確認すると、
「トト、それで?」と彼(ウォー)はマリニャンに言った。
と書いてある。ぼくのようなフランス語の初心者にもこれくらいなら分かる。

以前(2015年11月7日)、モディアノは翻訳者に恵まれていないと書いた。
残念ながら、前回のリストにまた1冊加わったようだ。

それにしても、ぼくのようにフランス語が読めない読者は、翻訳の日本語に違和感を覚えながらも、翻訳を読むしかない。
『家族手帳』は、1章ごとに、筆者の子どもが生まれた日のこと、マリニャンと中国に行こうとしたこと、母親の若い頃のことなど、時間も場所もばらばらに書いている。一気に読むとそれが読者の頭の中でまとまって、筆者の自伝的なひとまとまりの物語として現れてくる仕掛けなのだ。だから、できるだけ一気に読む必要がある。畢竟、日本語で読むことになるわけだが、それが読みにくいとなると……

2016/09/03 22:17 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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