ボルジア家



アレクサンドル・デュマの『ボルジア家』を読む。
ヴェネツィア共和国、フェラーラ公国、フィレンツェ共和国、教皇領、ナポリ王国、シチリア王国、ミラノ公国、シエナ共和国、サヴォイア公国などいくつもの国に分かれている15世紀も終わりのイタリア。しかも外からは、フランス、トルコ、スペインなどが征服するチャンスを窺っている。
ロドリーゴ・ボルジアは、策略をめぐらし、金を使って、ローマ教皇アレクサンデル6世になる。その息子にチェーザレ、娘にルクレツィアがいる。日本ではこの2人のほうが有名だろう。
ボルジア家には悪の血が流れている。
裏切り、策謀、近親相姦、不倫、戦争、残虐行為、暗殺、酒池肉林の宴など、ロドリーゴもチェーザレも悪の限りを尽くす。これでもロドリーゴは教皇で、チェーザレは枢機卿なのだ。カリギュラ、ネロを連想させる。
教皇自らがこれでは、マルティン・ルターが宗教改革を唱えるのも無理はない。もっともキリスト教の堕落というよりも、ボルジア家の人々だけに問題があるようにも見受けられるが。
おびただしい人名、地名がでてくる。国がたくさんあり、敵対したり、同盟したり、時局によってころころ変わるので、その関係は複雑である。しかし、デュマの筆は冴えている。
「プロローグ」を読んだだけで、話に引き込まれる。これだけ込み入った話をこれだけコンパクトにまとめるのは並大抵の筆力ではない。普通の作家なら、10巻くらい書いても書ききれないことを1冊にまとめている。こんなことを思っていたら、『チェーザレ 破壊の創造者』というマンガが出ていることを、「あとがき」で知った。このマンガ、現在も連載中で、単行本は11巻まで出ているそうだ。
人名、地名になじみがなく、なれないと読みにくいと思うが、日本の戦国時代と思えば、夥しい人名と地名が苦にならなくなるだろう。こんなにたくさん人名地名を一度で覚えきれるものではない。しかし、読むあとから忘れても作品を楽しむのにさほど影響はない。とにかく話がおもしろいので。
登場人物の名前など、ずいぶん列挙しているが、1度しか出てこない人もたくさんいるので、あまりこだわらないで読むのがいいと思う。世界史のテストを受けるわけではないのだから。
田房直子の翻訳が素晴らしい。

2016/10/15 12:14 | 本の紹介COMMENT(2)  TOP

コメント

Re: タイトルなし

デュマの場合、1冊にまとめているのでざっくりと書いてあります。細かく見ていけばチェーザレにもいいところはあるのでしょうが、デュマはボルジア家の人間は悪と決めつけていますね。今読んでいるマンガの『チェーザレ』も、塩野七生寄りのチェーザレ像かな。最近はこうした評価が主流なのかも。なにしろデュマの本は、1839年、江戸時代に出ていますからね。

No:24 2016/10/23 21:15 | desultory #- URL [ 編集 ]

なんだか華麗なる悪には、人間は弱いのかしら。わたしは塩野七生の「チェーザレボルジアあるいは優雅なる冷酷」ですっかりチェーザレ・ボルジアのファンでしたけれども。でも恐れるものを持たない絶対権力者くらい怖いものはないですよね。ヂュマが書くとヨーロッパ風大河ドラマみたいになるんでしょうね。

No:23 2016/10/23 15:05 | Keity** #- URL [ 編集 ]

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |