計算尺



モームの“Of Human Bondage”(人間の絆)を読んでいたらtrigonometry(三角法)という単語が出てきた。
主人公がドイツに行って、数学の個人教授を受ける。しかし、先生は世間話ばかりしていて数学を教えないことがある。先生はすまないと謝るのだが、主人公は先生の無駄話のほうが世間勉強になると考えている。そこで作者はこんなふうに書く。
「ちっとも分からないtrigonometryよりも、先生の話のほうがはるかに重要だと彼は思った。」

このtrigonometryで、サム・クックの“Wonderful World”という歌を思い出した。
こんな歌いだし。
♪Don’t know much about history
Don’t know much biology
Don’t know much about a science book
Don’t know much about the French I took

歴史(history)や生物(biology)や科学(science)や フランス語(French)はあまり分からないけど、ぼくが君を愛しているということは分かっている、と続く。
高校で習う教科を歌に盛り込んだのがなかなかしゃれている。
しかも、韻を踏んでいるのが面白い。

で、2番の歌詞に出てくるんですね、trigonometryが。
これと韻を踏んでいるのは、geography(地理学)。
他に代数(algebra)と計算尺(slide rule)が出てくる。
この曲1959年に発表されているから、出てくる教科もちょっと古い(計算尺は教科ではないけれど。)
ぼくたちの世代だと、代数、幾何などという数学用語は使っていないと思う。式の計算とか、図形問題とか、言っていたはずだ。英語ではいまでもalgebraをふつうに使っているようだが。
それにしても計算尺。懐かしいなあ。
と言っても、ぼくは使ったことはない。いや、実物を見たことさえないと思う。ぼくが高校の頃も、工業高校などでは使っていたようだが。

計算尺が出てくる歌詞のところで、サム・クックは「計算尺なんてものが何のためにあるのかわからないけれど、1+1が2になることくらいぼくだって知っている」と歌っている。
そして、「このぼくという1が、君という1といっしょになったら、この世はなんてすばらしいことだろう」と続く。
この辺の歌詞、ぐっと来ますね。ポップスの歌詞として非常によくできていると思う。
この曲は、サム・クック、ルー・アドラー、ハーブ・アルパートの合作になっている。
ルー・アドラーは、ママス&パパスやキャロル・キングなどのプロデューサーとして有名な人。
ハーブ・アルパートは、『マルタ島の砂』『蜜の味』のヒットで日本でもおなじみの、あのハーブ・アルパートだ。

今日、友人とランチしていて、何故か計算尺の話になり、サム・クックの話になった。
友人は進学校出身だが、計算尺を習ったと言っていた。
同じ年代でも、地域や学校によって少し違うのかもしれない。

2016/11/16 21:57 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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