エピタフ



コリン・ジョイスのエッセイを読んでいたら、イギリス独特の食べ物マーマイトMarmiteについて書いていた。マーマイトは少ししょっぱくて、ねばねばしている。色は黒っぽい。ふつうトーストに塗って食べる。イースト菌のエキスから出来ているという。イギリスでは、食べる食べないに関わらず、どこの家にもあるのだという。これこそイギリスらしい食べ物だというのだ。オーストラリアには、ヴェジマイトという、マーマイトに似た食べ物があるが、オーストラリア人の前で似ていると言ってはいけないのだという。オーストラリア人はヴェジマイトを誇りにしているから、彼らを怒らせることになる。

誇りにしているという点では、イギリス人も負けてはいない。2011年にデンマークがマーマイトの輸入を禁じたとき、「いったいなぜ?」という不満の声が上がった。新聞でも取り上げられた。デンマークはスキルを持った外国人労働者を失うだろうと書く新聞もあった。マーマイトがないと、デンマークにいるスキルのあるイギリス人労働者たちが、本国に逃げ帰ってくると言わんばかりの論調だった。

エッセイの中で、デンマークがマーマイトを禁じたというニュースは、英国民の中に憤りと混乱を引き起こしたと書いているところがある。原文では、憤りがindignation、混乱はconfusionだ。confusionは辞書を引くまでもないわけだが、今回は何気なく辞書を引いてみた。すると、confusionには、「混乱」のほかに「こんちくしょう。大変だ!」という間投詞の意味があることが分かった。

で、思い出したのが、キングクリムゾンの『エピタフ』の一節、♪Confusion will be my epitaphという歌詞。これはふつう「『混乱』という言葉が私の墓碑銘になるだろう」くらいに訳しているかと思うが、「こんちくしょう」という意味をかけているのかもしれない(そのほうがイギリス人らしいよね)と思ったので、調べてみた。(つまり、「俺の墓碑銘には『こん畜生』と書いてくれ」という意味も掛けている?)

いろいろなサイトで訳しているが、皆さん現代詩風にかっこよく訳していますね。何が言いたいのか、けっこう難解なところもある。『エピタフ』のモデルや時代背景を書いているサイトもある。ここでは世界史を繙いて、かなり詳細に論じているが、これが的を射ているのかどうかは、ぼくの知識では判断がつかない。作詞したピート・シンフィールドはまだ存命のようだから、あれこれ言う前に、本人に直接聞くのが一番手っ取り早いのではないだろうか……。

2017/01/17 16:51 | エッセイCOMMENT(0)  TOP

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