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馬上



小島ゆかりのフィルターを通ると、どんなものでも歌になってしまう。
大相撲、国会中継、東日本大震災、原発再稼働、憲法改正、老人介護、臓器移植、父の死、政治家の街頭演説、茂吉や左千夫へのオマージュ、児童虐待、認知症の母親の世話、自分の体調……などなど、彼女が歌うとそこに詩が生まれる。
もちろん、何気ない日常や、自然や風景を読んだ歌もたくさんある。真面目な歌もあればユーモラスなものもある。
彼女にとっては、生きていることすべてが歌になる。つまりテーマを選ばないということだ。そして何を切り取ってきても、小島ゆかりの歌になる。
サクサク読めて、笑えて泣ける。
ここには等身大の小島ゆかりいる。
そして彼女を通して見た、現代日本の社会がある。

前から通して読むとそれぞれの歌が響きあって、互いに歌が引き立つ。だからぜひ初めから通して読んでいただきたいのだが、あえて、ぼくが気に入った歌をいくつか引用してみよう。

山側を背にするときにおそろしく影が濃くなる夏の鎌倉
「東日本大震災で亡くなった方」二人増え梅雨明けしたり
いま湧けるこのあたたかき感情は要注意、また思い出がくる
耳遠くなるかとおもふ酷熱の街は真鍮色にゆがめり
今日ひどく心疲れているわれは買い物メモをポストに入れぬ
<らーめん>の行列の女子の割合は女性管理職の割合ほどか
人の歌を没にしけしからん歌人(うたびと)ら明るいうちから酒を飲むなり
かつてわが通知表を見せしごと検査結果を見せにくる母
われ無しで子らはもう生きわれ無しでもう生きられず老いたる父母は
蝉になった男、男になった蝉あるだらうそれを見ていた女も
終はれよと思ひ終はるなと思ふ介護のこころ冥(くら)き火を抱く
ゆふぐれの驟雨に濡れて飛び立てる冬の鴉のびいどろのこゑ
消灯ののちしばしの空刻(くうこく)に吹雪のなかの原子炉は見ゆ
さやゑんどう炒めて藻塩少しふるこの指加減をアシモ君知らず
さうか君は糞をするために来たんだねひかりあふるるこのベランダに
「簡潔に」と言われてもなほ言ひ募る安倍総理おちついてください
笹百合のつぼみは鶴の気配して古代と同じ夏の月照る
神秘的リズムをもちてほぼ歩きときどき走るリオネル・メッシ
尊敬をリスペクトと言ふ人なぜか増えつつ プリペイドカードの時代
雨の夜の月こそあやし月を恋ふこころはやがて月を身籠る
増えすぎた記憶こぼれてあそこにもそこにも赤きサルビアの花
りるりるり虫鳴く夜のりるりるり涼しきりるり孤りのりるり
朝からの夫の放屁におどろかず秋の窓辺にコーヒーを飲む
「あぶないことしてはだめよ」という教へおもいつつ見る体操競技
玄関にカナブンひとり訪れてはじまる推理小説の夜
スマートフォン使へぬわれに負け惜しみの広き空あり白鯨がゆく
ベーカリーの鈴(りん)の鳴るドア入りたし夢見るころのやうな顔して

2017/03/06 21:26 | 本の紹介COMMENT(2)  TOP

コメント

Re: タイトルなし

こう歌を読むと触発されますよね。
<いけないと、思いつつあり 花曇り>
に付け句してみました。ちょっとくだらないんですが、
こんなのはいかが?
<涙こぼるる 鼻もこぼるる>
春なので恋愛小説を読んでいたら、涙がこぼれた。花粉症で鼻水もこぼれた。
って感じですかね……

No:39 2017/03/07 12:44 | desultory #- URL [ 編集 ]

最近、すっかり小説も詩も読まなくなりましたね。
<いけないと、思いつつあり 花曇り>
なんて...

No:38 2017/03/06 22:59 | Keity** #- URL [ 編集 ]

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