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leはどこへ行った



フランスの詩人にポール・エリュアールという人がいる。そのエリュアールに、Je te l'ai dit…という詩がある。「どこお茶」をよく訪問してくださるKeityさんがブログで引用していた。
日本語訳とフランス語の原文と対訳で、全文引用してあった。で、日本語訳と原文を見比べていて、気になったことがある。
この訳文、壺齋散人という方のブログから引用しているらしい。訳は壺齋散人。まず、出だしの3行を引用する。

 ぼくが君に語ったのは雲のこと
 ぼくが君に語ったのは海に生えている木のこと
 波のこと 葉陰にいる鳥たちのこと(壺齋散人訳)

 Je te l'ai dit pour les nuages
 Je te l'ai dit pour l'arbre de la mer
 Pour chaque vague pour les oiseaux dans les feuilles(原文)

直訳すると、

私は君にそう言った 雲のために
私は君にそう言った 海の木のために
一つ一つの波のために  葉の中の鳥たちのために

となるだろう。
散人の訳では、「ぼく」が「君」に語ったのは、「雲のこと、波のこと、鳥たちのこと」となっている。以下もこの調子で、「岩がたてる音のこと ぬくもりのある手のこと きょろきょろと動き回る目玉のこと 飲み込まれた夜のこと 道沿いの柵のこと……」と続く。「私は 君に それを 語った ~のために」という構文が無視され、「~ために」の「~」の部分に入っている事柄について語ったというふうに訳している。
フランス語の初心者であるぼくが言うのもオコがましいが、ai dit(言った)の目的語はte(君に)とle(それを)ではないだろうか。(leはaiの前に置かれているので、l’aiとなっている。)それではleは何を指すかというと、この詩の最終行ではないかと思われる。
最後の2行を引用する。
 Je te l'ai dit pour tes pensees pour tes parole
 Toute caresse toute confiance se survivent.
わたしはきみにそう言った きみの想念のために きみのことばのために
どのような愛撫も どのような信頼も 生きのびるのだ、と。(宇佐美斉訳)

この場合le(ル)は定冠詞ではなく、中性代名詞。leは普通、前に出てきた属詞、節、不定詞などを受けるが、この詩の場合、最後まで来ないとle(そう)の内容が分からないように書いてあるところがミソ。
例えば英訳では次のようになっている。leをitと訳しているし、pourをforと訳している。私が君に言ったことは、最後の一行、Every caress every trust survives(あらゆる愛撫が、あらゆる信頼が、生きのびる)だけだ。

I said it to you for the clouds
I said it to you for the tree of the sea
For each wave for the birds in the leaves
For the pebbles of sound
For familiar hands

For the eye that becomes landscape or face
And sleep returns it the heaven of its colour
For all that night drank
For the network of roads
For the open window for a bare forehead
I said it to you for your thoughts for your words

Every caress every trust survives.

2017/06/05 22:03 | 語学COMMENT(0)  TOP

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