エドワード・トマス訳詩集



エドワード・トマスは英国の詩人。詩の翻訳はこれが初めてかもしれない。
エッセイ、紀行文などはたくさん書いているが、詩はそれほど残していない。第一次世界大戦で若くして戦死してしまった。
吉川朗子の翻訳が上手いこともあるが、イギリスの田園風景、そこで暮らす人びと、詩人自身のことを歌った詩が、素晴らしい。
ぼくは特に「五 大地の住人」の章に収められている「ロブ」という長い詩が気に入った。が、これは長いのであきらめて、「7月」という短い詩を引用しよう。

雲のほか動くものはなく 硝子のような湖面には
雲と小舟の影が映る。小舟自体が動くのは
暑さのなか 孤独に浮かぶまどろみを破り
見えているのは鳥か塵か
岸辺の森はもう目覚めているか
確かめようとするときだけ。

夜明け以来 高く 深く 光が広がり 満ちていく
長いひととき、僕はずっと ひんやりとした葦が
水中に映る さらに冷たい影の上に頭(こうべ)を垂れるさまを 眺めていた。
そんなに長い間 考えるに値するものは 何もなかった。
遠くの葉陰で モリバトの語るすべてのことが
こうして静かに横たわる満足感で 心を満たす。

エドワード・トマスは日本ではほとんど知られていないと思っていたら、イギリスの児童文学作家、エリナー・ファージョンの『想い出のエドワード・トマス―最後の4年間』という本の翻訳が出ていた。ファージョンは『銀のシギ』『ムギと王様』などで知られる人気作家。日本でも翻訳がたくさん出ている。
意外な取り合わせ。
トマスが戦死する5年ほど前から親交があったらしい。

2017/10/06 21:53 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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