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いろはうた 2



小松英雄は「いろはうた」を読み解いていく過程で、古代からの仮名遣い、発音、アクセント等に触れ、「大為尓(たゐに)」、「阿女都千(あめつち)」などの誦文、『金光明最勝王経音義』『源順(みなもとのしたごう)集』『色葉字類抄』『下官集』などの書物を時代順に検討している。
先にも書いた通り、これら書物のタイトルを見ただけでも、一般向けとはいえ、ある程度の国語学的知識が必要だろうということは見当がつく。

『下官集』というのは藤原定家が書いた表記の仕方のハンドブックのようなものだ。
定家と言えば『新古今和歌集』の編者であり、小倉百人一首の選定者として有名だ。これだけでも、日本文化に多大な影響を与えている。
しかし定家には、別の業績もある。
それはいわゆる「定家仮名遣い」というものを考え出して、平安時代の文献を書写し、今に伝えたこと。
当時表記が乱れていたのでそれを正すために定家が仮名遣いを定めたというのが一般に言われていることだが、小松はもっと突っ込んで、定家仮名遣いを評価している。
実は、現在われわれが読んでいる『源氏物語』や『更級日記』など平安時代の古典の多くは、平安時代から伝わってきている原典が残っているわけではない。
その多くは藤原定家が書写した、いわゆる定家本という形で残っているものを活字にしたものなのだ。定家は、これらの作品を書写する目的で、仮名遣いを考え出したのだという。

学校で現代仮名遣いを学んでしまった我々にはなかなか想像できないが、「おとこ」か「をとこ」か、とか、iの音を「い」「ゐ」「ひ」のどれで表すのか、とか、そういうことがはっきりしないと、言葉は表記できない。
例えば現代仮名遣いでは、王子を「おおじ」と書いたら間違いだと、ぼくたちは学校で習うから「おうじ」と書く。これが現代人の共通理解である。こういうものを先に習っているから、仮名遣いなど決まっているじゃないかと勘違いしやすいが、こうした共通理解がないと「おうじ」「わうじ」「おおじ」「おほじ」「おおぢ」などと書く人が現れて、書き手の意図が読み手に正しく伝わらない。こういうことをなくそうとしたのが定家なのだ。
定家は、自分が書写した平安時代の書物を、書き手が意図した通りに読者に読んでほしかった。
素人のぼくが理解できた範囲で書いているので、よく分からないところもあるかと思いますが、まあ、こんなところです。詳しくは『いろはうた』を繙いていただきたい。

2018/05/16 16:33 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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