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北軽井沢を編む



 詩人の正津勉が、谷川俊太郎の詩集から北軽井沢に関連する詩を選んで収録したもの。
 膨大な詩の中から、28編を選んでいる。少し少ないようにも感じるが(見た目薄い本)、この絞り方が尋常ではない。谷川のエッセンスをギュッと抜き出している。
 谷川は父親谷川徹三に連れられて、子供のころから、北軽井沢の別荘に行っていたという。そこでの自然とのふれあいから生まれた詩篇を、正津勉が厳選している。
 詩の選び方も、並べ方も、よくできている。
 正津勉という名前、ぼくにとっては懐かしい名前だ。
 何十年か前に現代詩に凝っていた頃、若手の詩人の中で好きな詩人だった。
 久しぶりにこんなところで出会うとは。

 谷川の最新の詩集がもう1つ出ている。『聴くと聞こえる on Listening 1950-2017』だ。こちらは音について書いた詩をまとめたもの。『62のソネット』の詩が入っているので、アンソロジーか。新たに書き下ろしたものも交じっている? 
クラシック音楽について、武満徹の思い出、自然界の音について書いている。どの詩も融通無碍で、自在に書いているように見える。
 とにかくうまい。
 書き出しがカッコいい。少し引用しよう。

物音

明け方 どこかで
物音がする
まどろみながら耳が
聞いている
目覚めてしまいたくない
物音を運んでくる空気は生暖かく
一日の光はまだまぶたに隠れている……(以下略)

 次は全文引用する。

クラヴサン

曇ってはいたが妙にすきとおった夜
(それは北風のせいだったかもしれない)
僕の心はクラヴサンの音に満ち満ちていた
それは
激しい幸福の感じだった

明日は晴れる ふと僕はそう思った

「モーツアルト、モーツアルト!」からは出だしの4行。

メキシコ風の刺繍のある紺の上衣の悠治が
くねくねと歩いてきてピアノの前に座り
奇妙なモーツアルトが始まった
今にもつまずいて転びそうなロンドだ……(以下略)

「悠治」はピアニストで作曲家の高橋悠治のこと。

「泣いているきみ」を読むと、谷川さんは女性にもてるんだろうな、と思う。
 しかし、自分が泣かせた女性にこんな詩を贈ったら、
 谷川さん、ずるくない?

2018/07/29 21:10 | 本の紹介COMMENT(0)  TOP

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